2016.11.24 Thu
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いつもの素材が100倍おいしくなる、正しい鍋奉行のススメ

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寒い時期の食の楽しみといえば……そう、鍋ですよね。

肉や魚、野菜にキノコに豆腐まで、いろんな栄養素をバランスよく摂取でき、食べるうちに体もポカポカ温まって一石二鳥。日本の冬のごちそうです。

みんな大好き鍋料理ですが、贅沢なことに毎週毎週つづくと飽きてしまうもの。飽きずに、かつおいしく楽しむ方法はないのだろうか? そんな虫のいいことを考えていたら、ありました。数十年の食べ歩き経験から一流割烹の「鍋作法」を体得した、グルメライター・マッキー牧元氏。ミスター鍋奉行ともいうべき氏が書いた『間違いだらけの鍋奉行』(講談社)の中には、これまでの鍋の概念を覆される、目からウロコの鍋オペレーションが載っていたのです。

マッキー氏に取材して感銘を受けた編集部A。さっそく自分たちでも実際に鍋を囲んで、正しい鍋作法を練習してみることに。いつもの素材が驚くほどおいしくなり、かつみんなの体も心も芯からあたためる……鍋奉行の手練手管をどうぞご覧ください。

 

<監修者紹介>マッキー牧元氏
タベアルキスト。『味の手帖』指南役。数多くのメディアに記事を寄稿しているグルメライター。(社)日本鍋奉行協会の顧問をはじめ、ポテトサラダ学会学長、胃袋拡張ツアー団長など、美食会の重役も務める。

 

「いつもの鍋」のNG点

Japanese-style stew cooked at the table

まずは「いつもの鍋手順」のどこをどう改善すべきなのかを、もっともポピュラーな寄せ鍋を例に、鍋奉行の目線で見てみましょう。

通常、鍋をはじめる時、皿の上の具材をめいっぱい鍋に入れますよね。お店などの場合は、あらかじめすべての具材が鍋に入れられていることも少なくありません。火を点けたあとは湯気が出てグツグツ沸騰してくるまで、フタを開けずに待つのが一般的な鍋パターン。

 

しかしマッキー氏いわく、この間、鍋の中はみるも無残な惨状となっているというのです……

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ミスター鍋奉行のワザ①

すべての具材を同じ時間、加熱することなかれ

野菜や魚貝、つみれや豆腐などさまざまな具材が一堂に会する寄せ鍋ですが、それぞれベストな加熱時間は異なります。鍋以外の料理では魚と青菜は別々のタイミングで調理しますが、鍋料理の場合、一緒くたに料理しても「こういうものだろう」と感覚が麻痺している人が多いようです。鍋奉行の一番大きなミッションは、「素材それぞれの加熱時間を知り、絶妙の火入れを実行する」こと。ここを押さえることで、同じ具材でも驚くほど味が変わります。

 

理想の寄せ鍋づくり〜準備編〜

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魚貝を主とする寄せ鍋。今回はマッキー氏が一流割烹に取材して学んだ、本格的な下ごしらえにチャレンジしてみます!

<購入する材料>人数分だけ用意する具—

海老、あさり・蛤、白身魚(今回はサワラとタイを使用。あればヒラメやタラ、金目鯛なども◎)

人数分以上用意する具—

生わかめ、葱、白菜、小松菜・チンゲンサイ、シイタケ、シメジ・エノキ、豆腐、白滝

 

魚貝類

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海老

頭を取って殻をむき、背中に包丁で縦に切り目を入れて、中の黒い筋(背ワタ)を取り除いておきます。少量の水溶き片栗粉につけて揉み、水で洗い流して汚れをとっておきます。

 

あさり、蛤

塩水に浸けて砂抜きをします。塩水の加減は、水カップ1に対して塩大さじ2分の1が目安。2時間ほど置いたら、流水でこすり洗って砂を完全に落とします

 

白身魚

今回は仕入れの都合上、切り身を購入しましたが、丸ごとさばく際にはスチールタワシで磨いて鱗を落とし、5センチ角に切って塩を振り、30分置いて水気を拭きます。その後、熱湯でさっと霜降りします。

 

野菜類

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葱は丸太切りにし、半分は食べやすいように隠し包丁を入れておきます。残り半分は丸太切りにしたあと、軽く焼いて表面に焦げ目をつけ、風味にアクセントを出します。

 

白菜

白菜は天日干しにしておくと旨み・栄養ともにアップ。もしくは、1枚1枚を広げた状態で低温のオーブンで焼くと甘みが出ます。芯は細切りと、削ぎ取り(包丁を斜めに入れる切り方)の両方を用意します。葉は一口大にちぎりましょう。

 

小松菜、チンゲンサイ

ダシ汁で湯引きした後、チンゲンサイは削ぎ取りにし、小松菜は3分の1くらいの長さにちぎっておきます。

 

 

キノコ類

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シイタケ

縦半分に切って、熱湯に10分間浸けた後、水気を絞ります。もしくは、オーブン等でさっと素焼きにしてもOK。

 

シメジ、エノキ

塩水に30分浸けておき、その後ホイルに入れてオーブントースターで空煎りします。

 

その他

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湯葉

板状のものはそのまま。さわるとすぐに割れてしまうので扱いは丁重に。

 

豆腐

豆腐はお玉ですくいやすい大きさにカットし、低温のダシ汁で温めておきましょう。

 

白滝

アクを抜くため下茹でし、その後フライパンで空煎りします。

 

生わかめ

刺し身コーナーで売っている生わかめを洗って水気を切っておきます。

 

ダシ汁

まず、鍋に1ℓの水と昆布を入れ、3分の2くらいの量になるまで煮詰めます。次に、カツオ節を1つかみ入れ、そこに1.5ℓの水を足します。味付けは酒大さじ2杯と、薄口醤油大さじ2杯で。その後、火にかけ、一煮立ちしたら火を止め、そのままの状態で冷まします。ダシ汁は野菜や豆腐の下ごしらえにも使うので、多めにつくっておきましょう。

 

ミスター鍋奉行のワザ②

準備時間は自身の経験値から逆算して多めにとるべし

切るだけのふだん鍋とは異なり、本格的な寄せ鍋の準備には下茹でやオーブン焼きなど、素材の特徴を引き出すための工程が必要。ザルの数が足りない、塩加減がわからないなど、ちょっとした判断に迷う場面も多く、かなり時間がかかります。とりかかる前に手順をシミュレーションしておくか、料理上手な人がひとりでもいると安心です。今回は自炊経験のある2名で準備して、約2時間強かかりました。

 

理想の寄せ鍋づくり〜役割分担編〜

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全行程を取り仕切るのが鍋奉行の務めですが、他人にまかせられる作業は適材適所で割り振っておくことも、チームの連帯感を高めるのに効果的です。

 

鍋奉行……具材の栄養や持ち味を壊すことなくみんなに食べてもらうためのお世話役。鍋を囲む人々の幸せを生むプロデューサー

待ち奉行……鍋の進行には手を出さず、ひたすら食べる時がくるのを待つ人。女性ならば「待ち娘」となる

勘定奉行(上様)……代金の割り勘をする人が勘定奉行。領収書がほしい人は上様となる。

アク代官……アクをすくい取る作業をする人

 

ミスター鍋奉行のワザ③

鍋奉行は主役ではなく黒子に徹すべし

鍋奉行になったからにはオレが仕切るぞー!と張り切る気持ちはわかりますが、上から目線であれこれ命令したり、自分が持っている鍋知識を一方的にひけらかしたりしてしまうと、周りも萎えてしまいます。鍋を中心にみんなの会話がはずみ、笑顔になっているかをしっかり見届け、メンバーの会話が途切れた時にはさりげなく話題を提供するなど、黒子のスタンスに徹してみましょう。

 

理想の寄せ鍋づくり〜心と体の準備編〜

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鍋奉行は開始前に、スムーズに進行できるよう席の確保、具材・道具のポジションをチェック。最初の具を投じる前に、いま一度、加熱時間の目安表を頭に叩き込みます。

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「一具一人主義」で3種類ずつ投入

寄せ鍋はごった煮ではなく、食材に熱を入れて旨みを引き出し、食べやすくする調理法。魚など人数分用意した具は、ひとりにつきひとつずつ割り当てていく「一具一人主義」で。投入した具材すべてに目が行き届くように、一回に入れる具の種類は多くても3種までに留めましょう。常に火加減をコントロールし、それぞれ火が通った瞬間に電光石火で取り出し、最上の状態でメンバーの皿へ静かに置いていきます。

決して沸騰させない。70〜80℃をキープする

意外ですが、寄せ鍋はグツグツ沸騰させていはいけません。弱火〜中火を巧みに使い分けつつ、ダシ汁の温度は常に70〜80℃になるよう、コンロのツマミをこまめに調節しましょう。

 

ミスター鍋奉行のワザ④

長丁場に備えて、普段から下半身を鍛えておくべし

写真のように鍋奉行の稼働範囲は広く、迅速に腕を伸ばすためにはテーブル席なら立って、座敷席なら膝立ち〜中腰で具をさばくことになります。最後まで凛々しい鍋奉行ぶりを維持できるよう、普段から筋トレして下半身を鍛えておきましょう。

 

理想の寄せ鍋づくり〜実食編〜

それでは編集部Aの鍋奉行・初舞台、満を持してスタートです!
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まずは鍋にダシをはり、あさり、葱、豆腐を入れて点火。弱めの中火をキープし、ダシのまわりの部分がふつふつとしてきたら弱火にします。

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芳醇なダシの香りにひとしきり酔いしれたら、おのおの生わかめを箸でつかみ、しゃぶしゃぶして食べます。たっぷりのダシのなか優雅に泳ぐわかめを見ていると、高級割烹気分が高まります。

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わかめをいただき終わったあと、あさりが食べごろに。

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開いてスグの、この弾力。身を噛んだ瞬間にあさりの旨みが口内にあふれ、………うまい!

 

葱や豆腐も、煮えたものからいただきます。

 

すべての具材を回収し終えたら、次は蛤。しばらくおいて白身魚を投入。魚貝が煮える寸前に入れた白菜とあわせて、同じタイミングで引き上げるとこんな感じ。
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白身魚の身の柔らかさ、中にギュッと濃縮された魚のコクまでもが鮮明に感じられ……
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あまりのうまさにメンバーにも笑顔がこぼれます。

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おっと、煮えてないのにむやみに具をいじるのは御法度ですぞ。奉行意外のメンバーがさわろうとしたら、優しくソフトに指導しましょう。

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魚貝をひととおり堪能したら、チンゲンサイ、キノコ類を入れてスグ引き上げます。エノキなどバラバラになりやすい具は各人が食べる分だけ箸にとり、鍋の中で持ち続けてしゃぶしゃぶする方式にするのもいいでしょう。とにかく鍋には細かい食べカスを残さないように。
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ダシの表面に泡立つアクが大きくなってきたらアク代官の出番。穴あきお玉でせっせと取り除きましょう。
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そしてついに、「寄せ鍋の華」ともいえる海老の登場です。一尾ずつしゃぶしゃぶして、火が通るのをじっと待ちます。もうイケるか? それともまだなのか……? 最高のタイミングを見極めんとする鍋奉行と、一同のあいだに緊張が走り……
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「よし今だ!!!」の号令で、みんな一緒に口の中へ。さあお味のほどは……??
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「うむ! 美味であるぞ!」 上様もこの満足顔。
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緊張の場面が終わったら、次のターンでは一息つくために小松菜・白菜を。このように魚貝と魚貝のあいだに野菜を配置し、味をリセットして緩急あるシナリオをつけると、メンバーの感動も高まります。

以上の要領で、魚貝、野菜、豆腐などをバランスよく巡っていきます。

 

「もうお腹いっぱいかも……」

誰かがつぶやきだしたら、そろそろ締めの時間です。

 

理想の寄せ鍋づくり〜雑炊(おじや)編〜

雑炊(おじや)は鍋奉行最後のステージ。終わりよければなんとやら……といいますが、もしここをしくじると、メンバーの心に刻まれた美味なる感動が台無しです!! 今日の鍋シナリオを振り返り、以下のうちどちらの気分かを選択しましょう。

 

雑炊……多めのダシ汁にごはんを少量落とし、煮すぎずさらっと仕上げる

おじや……ごはんをよく煮て、卵でとじてごてっと仕上げる

 

メンバーの胃の空き容量次第では、「どっちも食べたい!」もアリです。その場合、まずは少量のごはんで雑炊→おじやへ移行するのがベスト。今回は基本の雑炊の手順を紹介します。

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これまで数々の具材を沈めてきたダシ汁。旨みの小宇宙ともいうべきこのスープを引き立てるには、最低限の風味付けでOK。

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器に盛ったあとは、汁気が多いのでついスプーンで食べたくなりますが、箸で食べるほうが香りが立ちますよ。

 

さあ、まだまだ終わらない「雑炊&おじや」の世界。

最大限に味わいたいなら、少量のごはんを少しずつ使って、以下の要領で「雑炊五段活用」にチャレンジしてみましょう。

 

ミスター鍋奉行のワザ⑤

最終奥義「雑炊五段活用」

一、茶碗に盛った白いごはんにダシを入れたお茶漬け状態

白ご飯を茶碗に少し盛り、その上からダシをかけ、ごはんをダシに少しずつ浸しながら食べます。

 

一、ダシにごはんを入れて軽く煮て、生姜汁をかけた雑炊状態

鍋にご飯を入れて軽く煮た後、茶碗によそい、生姜のしぼり汁を上からかけていただきます。(「基本の雑炊」に同じ)

 

一、火を通し、卵でとじてよそい、柚子をのせた軽いおじや状態

ご飯が入ったダシをさらに煮詰めます。混ぜながら溶き卵、ネギを加えて茶碗によそい、いただきます。

 

一、鍋のフタをしてむらしたおじや状態

さらにご飯に火を通し、海苔を加えます。おじや状態になったものを茶碗に盛り、七味唐辛子をかけていただきます

 

一、白いごはんにおじやをかけた親子丼状態

茶碗に盛った白ご飯に、おじやをかけ、ご飯とおじやを混ぜながらいただきます。

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まとめ

いままでやったことのない、本格的な寄せ鍋に挑戦したこの企画。一流割烹の流儀を自宅で再現するのは大変でしたが、ふだんの鍋では味わったことのない具材の個性や繊細さを実際に感じられて、非常に得がたい経験でした。毎回これだけ手を掛けて準備……というわけにはいきませんが、加熱時間にいつもより気を配る、など可能な範囲でエッセンスを取り入れるだけでも、段違いの味わいになることうけあいです。

 

また、ダシや具材の風味がしっかり立っていると最低限の味付けで済むので、減塩にも貢献。ゆっくりと味わって食べることによって満腹中枢が刺激され、食べ過ぎを防げたことも大きなメリットです。「おいしいものは体にもいい」、そんな名言(迷言?)とともに腹鼓を打った編集部Aでした。

 

マッキー氏の書籍『間違いだらけの鍋奉行』(講談社)にはしゃぶしゃぶやすき焼き、湯豆腐の「鍋奉行オペレーション」の他、日本全国のバラエティに富んだ鍋事情も紹介してありますので、興味がある方はぜひ手にとってみてください。

 

 

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