2016.07.27 Wed
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地球上で最も人間を殺している? 本当に怖い蚊の6つの話(1/1ページ)

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マイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツ氏は「世界で一番怖ろしいのは蚊」だとして、2014年に自身のブログでその脅威に目を向けるべきだと、「MOSQUITO WEEK」として注意を呼びかけました。蚊は、さまざまな感染症を媒介することから、「地球上で最も多くの人間を殺している生き物」とも言われています。

今回は専門家にお聞きした、蚊にまつわる6つの怖〜い話をお届けします。夏ならではのひんやりする……話で済ませられない、今そこにある危機、お読みください。

 

〈監修者紹介〉

高木正洋先生

長崎大学名誉教授。長崎大学熱帯医学研究所教授として、長年にわたり、マラリアやデング熱等の感染症にかかわる蚊の生態を研究し、世界的な媒介蚊対策にも従事。退官後の現在も、同研究所客員研究員として、またマラリアの撲滅を目指すNPO法人Malaria NO MORE Japan(マラリア・ノーモア・ジャパン)理事として活動中。

 

 

本当に怖い蚊の話①
「蚊は怖ろしい病気を媒介し、地球上で最もたくさんの人間を殺している生き物」

体長約15ミリ以下。風でも吹けば飛びそうなその体。見た目は弱々しいですが、あなどるなかれ、蚊は数多くの病気の媒介役として世界中で暗躍し、年間70万人もの人命を奪っている、人類の天敵ともいうべき存在なんです。

蚊が媒介する病気の数は現在わかっているだけでも100種類ほどあり、同じように病気を媒介するダニなどを抑えてダントツの1位。以下に主要な病気を挙げてみましょう。

<マラリア>
エイズ、結核と並ぶ世界三大感染症の一つ。病原体はマラリア原虫で、メスのハマダラカによって媒介される急性熱性疾患。マラリアによる死者数は年間58万人にのぼり、世界の人口に照らし合わせると、1分に1人の割合で死者が出ていることに。

ヒトに感染するマラリア原虫は4種類(熱帯熱、三日熱、卵形、四日熱)あり、最も危険といわれるのが熱帯熱マラリア原虫。世界のマラリア発症例の約半数、死亡例の約95%を占める。

初期症状が発熱、頭痛、悪寒といった風邪に似た症状であるため発見が遅れやすく、治療をせずに放っておくと、脳症、急性腎不全、出血傾向、肝障害などの合併症を起こして重篤化する。依然有効なワクチンは開発されていない。

<デング熱>
デングウイルスによる感染症で、ウイルスを持つヒトスジシマカやネッタイシマカに刺されることで感染する。通常3〜7日の潜伏期間を経て、発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、発疹などの症状が1、2週間続く。致死率は数%と低いものの、乳幼児や高齢者など抵抗力の弱い人は重症化する恐れがある。

また、デングウイルスには4種類の型があるといわれ、同じ型のウイルスに感染した場合は免疫によって軽症で済むが、別の型のウイルスに感染すると免疫が過剰に働いて重症化することがあり、稀に死に至ることもある。デング熱には有効なワクチンがなく、「かえりみられない熱帯病」ともいわれている。

<ジカ熱>
正式名称は、ジカウイルス感染症。デング熱と同じく、ヒトスジシマカやネッタイシマカを介してヒトに感染する。おもな症状は、発熱、頭痛、発疹、結膜炎、関節痛、筋肉痛などで、通常2〜7日程度で治まる。
症状自体は比較的軽度ながら、南米を中心とした流行地域では、ジカウイルス感染症のあとに、ギラン・バレー症候群(神経系の難病)の発症や、小頭症の新生児が増加していることが報告されており、ジカウイルス感染症との関連性が疑われている。

<黄熱病>
ネッタイシマカをはじめとする数種のヤブカ属が媒介する黄熱ウイルスによって起こる感染症。感染しても症状が出ないか、発熱、悪寒などの軽症で治まるケースも多いが、発症した患者の約15%が多臓器の出血や黄疸など重症に発展し、そのうち20〜50%の人が死亡すると言われている。

黄熱ウイルスの病原性を極めて弱くして作成されたワクチンが存在し、アフリカや中南米のリスク地域へ渡航する際は予防接種が推奨されている。

<日本脳炎>
日本脳炎ウイルスによって起こる中枢神経の疾患。ウイルスは豚など増幅動物の体内で増殖し、コダカアカイエカなど数種の蚊が増幅動物を吸血時する時に、一旦蚊の体内に取り込まれる。一定期間を経てヒトに感染可能となったウイルスは蚊の唾液腺に集まり、次の吸血時にヒトを感染させる。感染しても発症せずに終わる場合が多いが、発症すると20〜40%が死に至る。死亡は免れたとしても、生存者の40〜70%に何らかの後遺症が残るといわれる。

発症する場合は、通常6〜16日の潜伏期間を経て、高熱、頭痛、嘔吐などが現れ、やがて光への過敏症、意識障害、けいれんなどの中枢神経障害へ発展する。ウイルスに有効な薬はなく治療がきわめて困難であるため、日本では罹患リスクを大幅に低減できる日本脳炎ワクチンの接種が推奨されている。
このほかにも、「チクングニア熱」や「西ナイル熱」など、数多くの病気が蚊によってもたらされています。日本国内において、蚊が媒介する病気での死亡例は少ないですが、世界的にみればこれほどたくさんの病気が存在しています。日本に住んでいるのだから関係ない……と傍観を決め込む人も、海外旅行や海外出張などで感染する可能性はあるハズ。渡航地域での感染リスクを調べて、予防接種や防虫対策をとる必要があります。

 

本当に怖い蚊の話②
「暑い地域では蚊の体内で病原体の増殖が加速し、刺される機会も増えてリスクが倍々に」

蚊がさまざまな病原体の運び屋であることはわかりました。そしてさらなる悲報が。暑い地域(日本においては夏)では蚊の体内の病原体が増殖するというのです。

蚊は変温動物なので、気温が上昇するにしたがって体温も高くなります。蚊の体温が上がると、体内にいる病原体にとっては増殖するのに好都合。蚊は病原体にとって宿主であるだけでなく、貴重な増殖ポイントだったのです。

他方で、気温が上昇すると蚊のライフサイクル(卵→幼虫(ボウフラ)→サナギ→成虫→生殖)が早まり、一般的に蚊の寿命は縮まるのですが、卵も早く育つため、卵の成熟に必要な吸血の間隔が短くなります。よって一定期間に吸血されるヒトの割合は多くなります。

つまり、温度が高い時季(日本においては夏)は、蚊の体内で病原体が増殖しやすいうえに、蚊の絶対数も増えて刺されやすくなるという二つの要因が重なってきます。ただし、温度が高くても乾燥状態が続いた場合は、蚊の繁殖地である水域が干上がるので、必ずしも蚊が増加するとは限りません。しかし人間側が薄着になり刺されやすくなることも考えれば、差し引きしても総体的に、蚊媒介感染症のリスクは高まるといえます。

 

本当に怖い蚊の話③
「すばしこくて退治できない、刺されても気づけない……人間にとってやっかいな、蚊の飛翔能力」

怖ろしい病気にかからないためにも、刺される前に蚊を見つけてやっつけたいところ。けれども実際は、刺されても気づかなかったり、思いのほかすばしっこくて退治できなかったりしますよね。そんな彼らの飛翔能力に迫ってみましょう。

蚊が属する双翅目は、古生代のデポン紀(約4億1600万年前〜約3億6000万年前)に登場したといわれています。昆虫のはじまりは、ムカデやダンゴムシに似た生き物でした。その後、たとえばトンボのように立派な翅を得た昆虫は、空中も生活空間として利用出来るようになり、大繁栄しました。進化は止まることなく、飛翔の質も向上。4枚あった翅のうち、前の2枚で飛翔力を担保し、後ろの2枚は翅であることを止め、平均棍と呼ばれる、飛翔バランスをコントロールする器官に変化しました。蚊があんなにか細い体でずっと飛んでいられるのは、進化の過程で洗練された翅のおかげなんですね。捕まえにくいのも納得です……。

2014年、 MNMJ(マラリア・ノーモア・ジャパン)というNPO主催で、マラリア撲滅運動の一環として、こんなゲリライベントが行われました。道行く人たちに小さなシールを貼っていき、貼られたことに気づくかどうかを試しています。結果はご覧のとおり、ほとんどの人が貼られたことにまったく気づいていません。私たちは四六時中、周囲の危険に注意を向け続けることはできません。ましてや蚊のように目に見えにくいほど素早く動く攻撃者にとっては、人間の視野をかいくぐって接触するなど簡単なこと。一瞬の油断で許してしまった吸血が、その後の生き死にを左右することになるとは……残酷な現実です。

ちなみに、蚊に刺された時すぐさま気づく人と、まったく気づかない人がいるのはなぜでしょうか? 蚊はヒトを刺して血を吸い上げる時に、血液の凝固を防いで吸いやすくするため、ヘパリンという血液凝固阻止剤を注入します。この時、ヘパリンに対する感受性が高い人は、かすかな痒みを感知できるのですが、感受性が低い人は感知できず、刺されたことに気づきません。これは人間側の個人差によるものですが、感受性が低い人は、刺されたことに気づかないという歯がゆい体質をもてあますことになります。

 

本当に怖い蚊の話④
「蚊が媒介する病気の脅威は、熱帯から北上傾向にある」

蚊媒介感染症は長らく、年間を通して気温の高い熱帯・亜熱帯地域特有の風土病と考えられてきました。しかし温暖化傾向にある今日、温帯地域の日本までその脅威が北上する可能性は十二分にあります。実際、2014年夏には東京都内を中心に海外渡航歴のないデング熱症例が報告されるなど、流行地域が熱帯・亜熱帯地域から温帯地域へ北上する傾向が見えています。

ただし、今後温暖化がどのように推移していくかわからないので、確実に北上するとは言い切れません。仮に乾燥を伴う温暖化なら、水域で繁殖する蚊にとっては不利だからです。また、寒冷地特有のヤブカ(エゾヤブカ)などにとって温暖化は繁殖に有利とはいえず、生息分布が拡がったからといって一概に蚊の総数が増えるとは限らないようです。

一方、人やモノがさかんに行き来するグローバルな取引が行われている今日では、人為的な営みによって蚊の生息地が拡がるケースが増加。たとえば、A国にいた蚊の卵が荷物に付着してB国に届き、B国内で孵化して拡がったという事例も実際に報告されています。さらに、田畑の減少、宅地開発の影響を受けて、生息域や生息数が変動することもあります。そこに湖の水位変化、干ばつ等の自然環境の変化が合わさることで、また違った展開が起こることがわかってきました。

このように環境の影響を受けやすく、ある意味でデリケートな部分も持ち合わせている蚊。必ずしも種として繁栄の一途をたどっているわけではなく、死に絶える個体グループはいるものの、いっこうに絶滅しないのは、それだけ多くの仲間が地球上にいる、ということなんです。

 

本当に怖い蚊の話⑤
「蚊を地球上から完全に駆除することは不可能」

夏期、ドラッグストアなどに行くと、蚊取り線香やスプレータイプ、リキッドタイプなどさまざまな殺虫剤が所狭しと並んでいます。効き目は総じて良好であるだけに、年々蚊の数が減ってもいいはずなのですが、その場しのぎで終わっているのが実情。怖い話②で述べたとおり、蚊は高温期にすさまじい勢いで繁殖し、5日〜2週間のペースで卵が孵って成虫となるので、駆除が追いつかないんです。

行政による大掛かりな駆除も行われていますが、ヒトスジシマカをはじめとするヤブカは、家の庭などプライベートな空間で繁殖しやすく、駆除は個人任せになりがち。自分の家で駆除を徹底しても、隣近所にもやってもらわなければ意味がありません。

しかし、それでも蚊の完全駆除は難しいようです。シンガポールでは、地域ぐるみで蚊の駆除に取り組み、蚊を発生させた家庭には罰金を課していますが、蚊の撲滅には至っていません。小さな水たまりや古タイヤのくぼみなど、わずかな水域さえもすみかにしてしまう蚊のしたたかさを思い知らされます。

 

本当に怖い蚊の話⑥
「現在、国内拡散が懸念されているデング熱やジカ熱 警戒を怠れば、流行する可能性はある」

ここ数年、日本国内でにわかに知名度を上げた蚊媒介感染症といえば、デング熱やジカ熱。いずれも重症化するケースは稀ですが、ひとたび流行すれば人や社会に悪影響をおよぼすのは確実です。これらが日本国内で今後流行する可能性はあるのでしょうか?

<デング熱>
2014年夏、渡航歴のない感染症例が120例以上見つかり、一気にその名が知れ渡ったデング熱。翌年の大流行が懸念されましたが、2015年は輸入症例のみで、ひとまず流行には至りませんでした。不思議なのは、2014年と2015年で海外から持ち込まれるデング熱の数も、総数調査による蚊の数も変わっていないのに、国内感染発生がなかった点。はっきりとした理由はわかっていませんが、2015年は市民一人ひとりのデング熱に対する意識が高まり、自衛に努めた効果が大きいと考えられています。逆の見方をすると、去年は大丈夫だったからと注意を怠った途端、大流行するかもしれません。引き続き、気を引き締めて蚊対策に臨みたいものです。

<ジカ熱>
現在、ブラジルをはじめとした中南米で流行しているジカ熱。今のところ、日本国内での感染例はありませんが、リオ五輪を控えている今夏は、ブラジル渡航者がウイルスを持ち帰り、媒介蚊(ヒトスジシマカ)によって国内感染が拡がる可能性が無いとはいえません。

デング熱に比べると、感染しても発症しない率が高く、発症するのは約2割程度といわれています。ただし、症状が出ないからといってウイルス自体がなくなることはありません。感染に気づかないまま蚊に刺されて、感染を拡げることのないよう、渡航者は特に気をつけましょう。

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蚊にまつわる6つの怖〜い話、いかがでしたか? 蚊が媒介する病気は命をおびやかすほど深刻なものが多く、地球温暖化やグローバル化の影響で、その脅威は日本を含め、世界中におよんでいることがおわかりいただけたと思います。

完全駆除・撲滅が困難な手強い相手ですが、服装に気をつけたり、家の周りに繁殖地(水たまりなど)をつくらないようにするなど、一人ひとりの小さな心がけが蚊媒介感染症の抑制につながります。

 

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