2016.07.20 Wed
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浅漬け、おにぎらず、作り置き……夏場のお弁当と食中毒対策(1/1ページ)

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投稿型のレシピサイトが世の中に浸透してからというもの、海外からやってきた食のトレンドや、一般人が考案した家庭料理など、さまざまな料理アイデアが広く共有される時代になりました。

食の楽しみが増えた反面、料理の専門家ではない人・食品衛生の資格を持たない人が考案したレシピには、安全面での懸念も浮かび上がります。というのもこれからの季節、心配なのは食中毒です。つくりたてなら問題ないとしても、猛暑の状況下で、お弁当として持ち運ぶとすればどうでしょうか?

たとえば、夏場のごはんのおともにぴったりの「浅漬け」。行楽に持って行きたい「おにぎらず」。そして、週末につくって平日の3食をまかなう「作り置き」のおかず……。いずれもお弁当に入ってくる機会も多そうなメニューです。

今回はこれらのメニューにフォーカスし、食中毒のリスクを考察します。食品衛生のプロ、大阪食品衛生協会 食品検査センター所長・吉田さんに、微生物が入り込む可能性、調理時、持ち歩き時の注意点についてお聞きしました

 

夏場の食中毒の基本

下痢や腹痛、発熱、吐き気などの症状を招き、ひどくなると血便、腎障害のほか死亡することもある食中毒。主に食材に付着した細菌やウイルス、またはフグや毒キノコのように食材そのものに含まれている有毒物質などによって引き起こされます。夏場で注意すべきは細菌性の食中毒です。

食中毒を起こす細菌は、野菜が育つ土や水、肉・魚の体表、人の皮膚、腸の中に当たり前に存在しています。それが調理前の洗浄不足で食材の中に残っていたり、不衛生な器具の利用などで食材に付着。加熱殺菌を行わずに一定の温度で長い時間放置されると原因菌が増殖し、体調不良を引き起こす毒素を出すようになります。

細菌の発育には主に3つの要素が必要になります。ひとつは栄養分。食品や残菜、調理器具の汚れなどの有機物が、細菌が増殖する栄養源に。2つ目は水分。細菌は水に溶けている栄養分を分解して摂取するため、水分が多い食品の中で多く増殖します。そして3つめには温度。一般的な食中毒細菌は、10℃以上45℃以下の温度帯を好んで増殖します。

暑い夏は火を使った調理もおっくうになりますし、体の中から冷やせるような、水分多めの食べ物が欲しくなりますよね。逆に考えてみると、夏の食卓は細菌たちにとっては加熱殺菌されることなく、発育に必要な水分も潤沢にあるという理想的な環境。さらにお弁当は、冷蔵庫から出されて持ち運ばれるあいだ、外気温に晒されます。高温という条件も加わると、細菌の増殖は必至。これを防ぐためには、食中毒に対する正しい知識が必須です。

 

浅漬け

Tsukemono

浅漬けというと、塩を使っているから保存が利くのでは……というイメージがありますよね。しかしこの思い込みが落とし穴です。

日本では昔から保存食とされてきた塩漬けの漬け物。食塩濃度はだいたい10%くらい。海水の塩分が約3%ですから、塩抜きしないと食べられないほどしょっぱいものなのです。このぐらいの食塩濃度があってはじめて保存が利く、つまり塩が野菜の水分を排出して細菌の増殖を防ぐ効果があるのですが、現在スーパーで売られている漬け物の食塩濃度は2〜3%が主流。この程度では長期保存効果がありません。

昔からつくられてきた塩漬けと同じような考えで現代の漬け物を取り扱うのは間違いです。ましてや家庭でつくられた食塩濃度1〜2%程度の浅漬けはもはや漬け物ではなく、いうなれば塩で味付けしたサラダのようなもの。暑い時期、生野菜をうかうか常温で放置したりはしませんよね? ならば浅漬けも、それと同じ感覚で管理するのがベストです。

市販の浅漬けの賞味期限はおおむね、2、3日。これはあくまで開封していない前提での期限なので、開封後は少しでも早く食べるのが基本。手づくりの場合、家庭での衛生環境には限界がありますから、差し引きして1〜2日中には食べきる方がよいでしょう。既製品も手づくり品も、常温で放置せず、冷蔵庫に入れておくのは大前提。

お弁当などに入れる場合、持ち運びの際には保冷剤を入れ、あたたかいものとは一緒にしない等の注意が必要です。梅干しのような感覚で、ほかほかごはんの上にのせて持って行く……などもってのほか。7月下旬から8月中旬の一番暑い盛りには、できればお弁当にいれるのは控えたほうがよさそうです。

浅漬けから発生した食中毒で多いのは、魚に由来する腸炎ビブリオ菌によって引き起こされた事故。魚を切ったまな板で、そのまま浅漬けを切って、細菌が発生する事例が多いそうです。また、近年では夏祭りの屋台で見かけることが多くなったきゅうりの一本漬け。手の汚れや調理器具の汚れが災いしたのか、腸管出血性大腸菌の食中毒の事故がありました。ここから学べる教訓は、浅漬けを切る、たったこれだけの作業でも油断することなかれ。加熱をしない食べ物は、どこかで付着した原因菌をそのまま保持しつづけることになるため、包丁、まな板、菜箸、ザル、道具を洗う水まで、清潔なものを使用するようにしましょう。

 

おにぎらず

Onigirazu

夏にはおにぎりの食中毒事故が多いそうです。原因となるのは人間の手および皮膚に常在している黄色ブドウ球菌。食中毒のほか化膿性炎症などの表皮感染症を起こすこともある細菌です。数が少ないあいだは無害なのですが、菌が増えると人体に悪影響を及ぼすエンテロトキシンという毒素を出しはじめます。

おにぎりの食中毒発生パターンは主に2つあり、ひとつは、手でにぎったおにぎりを長時間放置した場合。にぎっている時は少量だった菌が、長いあいだ温かい温度で放置するとおにぎりの表面で増殖します。もうひとつは、おにぎりをにぎる手指に化膿性炎症があるなど、何らかの理由で菌がもともと多かった場合です。いずれも多すぎる黄色ブドウ球菌が毒素を出し、毒素が付着したおにぎりを食べると、激しい嘔吐を伴う食中毒症状が出ます。

手でにぎるおにぎりは黄色ブドウ球菌が付着するリスクがある。ならば、手でにぎらない「おにぎらず」は大丈夫か? そんな疑問を抱き、おにぎらずについての食中毒リスクについて尋ねてみました。

海苔の上にごはん、具を置いて海苔をたたみ込むだけで手軽にできるおにぎらず。レシピ動画を見ていると、おにぎらずとはいえ、ごはんや具材、海苔を配置する時は素手で食品にさわっている方が多いよう。これでは、にぎっていなくても細菌が付着するリスクに変わりはありません。

現在、食品製造業や外食産業では、素手でさわる作業はなるべく少なくするよう指導されており、直接口に入るものを扱う際には衛生手袋をつけるのが一般的。となれば、自宅でつくる場合もそれなりの配慮は必要です。基本はなんといっても、手をしっかり洗うこと。手や指に傷がある人は、食品にさわらないこと。そして、にぎらないからといって油断せず、できればラップや衛生手袋を使ってつくればなお安心です。

また、黄色ブドウ球菌は時間の経過によって増殖しますので、つくったあと、どれくらいで食べるかが重要です。理想はつくったあと2時間以内で食べ終えるのがいいですが、なるべく涼しいところで保管できた場合は、4時間くらいまでなら食べられると考えていいでしょう。くれぐれも、前の晩につくったものを翌朝〜翌日の昼に食べる……なんてことのないようご注意を。

他人がにぎったおにぎりを食べられない人が増えている……。近年そんなニュースがありましたよね。少し世知辛い気もしますが、衛生面でいうと正解のようです。

 

作り置き

Home Cooking Party / Pork fillet with side dishes...

現在、作り置き用のさまざまなレシピがweb上や書籍で紹介されています。その多くは煮るなり焼くなり加熱工程を経ているので、非加熱食品のような懸念はないものの、仮に日曜につくって金曜まで使い回すとした場合には、新たなリスクが考えられます。一度加熱処理をして殺菌したおかずでも、冷蔵庫でほかの食材と接触したり取り出す際にあらたに原因菌が付着することも考えられますし、時間の経過とともに増殖する可能性も高まるからです。

作り置きメニューは多彩なので、一概にこのレシピのこういう工程が危険、とひとくくりにはできませんが、この項では主に調理時、保管時の工夫を紹介します。

<調理法の工夫>
・できるだけ加熱調理。中までしっかり火を通す

食中毒を起こす菌の大半は、75度の加熱1分以上で死滅します。菌をやっつけるつもりで、じっくりと火を通しましょう。

・水分が残らない「焼く」「揚げる」「炒める」「いり煮」などの調理法にする
→水分が多く残っていると、細菌が増殖してしまいます。汁物は避け、煮物の煮汁も飛ばしてできるだけ水分を除きましょう。

<調理直後の工夫>
・つくり終わったらすぐ、うちわで仰ぐなどしてあら熱をとり、冷蔵庫に入れる

→つくりたての温かい料理を冷蔵庫に入れると、冷蔵庫内の温度が上がり、ほかの食材をいためてしまいます。かといって、あら熱をとるため何時間も常温で放置していると、その間にあらたな細菌が付着します。素早く効率的に冷ますことが重要です。

<保管時の工夫>
・保管の途中で熱を入れ直す

→時間が経つと自然、ある程度は菌が増えます。昔ながらの煮物を毎日煮返したりするような感覚で、作り置きした料理も加熱し直すと、その時点で居る菌を死滅させ、絶対数を減らすことができます。いちいち鍋にうつして加熱するのが面倒であれば、保存容器ごと電子レンジにかけてもOKです。電子レンジの方が中心まで一気に加熱できるという利点も。保管中だけでなく、食べる直前にも電子レンジで加熱しておけば殺菌でき、食中毒のリスクを減らせます。
食品の各製造工程で発生するおそれのある微生物汚染をあらかじめ想定し、製造工程のどの段階でどのような対策を講じるべきかを分析して衛生管理する手法を、HACCP(ハサップ)といいます。上記はこのHACCPを用いて、作り置き調理の各工程を分析してみました。ご自宅でも参考にしてみてください。

 


 

夏だからこそ体がバテてしまわないようにと、愛妻弁当にも気合いがはいりそうですが、よかれと思って食べたもので体調を崩してしまっては元も子もありません。持ち歩く時の保冷方法、お昼までの保管温度にも気をつけて、食中毒を予防しましょう。

参考:大阪食品衛生協会 食品検査センター

 

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